「旅」とはいつもの目線を変えること

「旅」は、入念な下調べと荷造りをして、お金をかけてするものだと思っていますか。はたまた、お金をかけなくとも、時間をかけてよそに何泊もすることだと思っていますか。もしそうなら、そのままの発想では本当に旅行に出かけた時も、いつも目線を変えた「非日常」に触れるのではなく、「娯楽」のシャワーを浴びる感覚だけが残るでしょう。何かしらハプニングが起こらなければ、つまらないと感じることでしょう。わざわざ旅行に出るということは、慣れ親しんだ居心地の良い日常を抜け出して、自由で無責任な、居心地の悪い「よそ者」の地位を獲得するということなのです。道を知らない、不文律を知らない、ことばが通じない……そのどれもが、いつもの目線から私たちを解き放してくれます。

夜の散歩に出かけてみよう

夜、散歩に出かけてみませんか。ちょっとした「旅」は、お金も時間をかけなくてもできます。ただ見慣れた家の近所の風景を歩く自分を、ちょっと変えてみるだけでできます。住宅街でキラキラ光るコンビニ、遠くで聞こえる電車のガタコト言う音、サッと動くネコの不気味さ。一つ一つに敏感になって、五感を研ぎ澄ませてみましょう。散歩が終わった頃には、脳内洗浄したように、さーっと体に風が吹き抜けていきませんか。そうなれば大成功です。五感は子供のように無垢となり、朝起きたときにはいつもの通勤路までもが新鮮に、初めましての風景に思えるのです。「旅」すること、それはいつものまなざしを当たり前だと思わなくなれる、そんな体感のことを差すのです。